アメリカでは、障害を持った子供が特別支援教育を受ける資格があります。 特別支援教育は、障害を持った子供のニーズを認識し、学習面や生活面での困難を少しずつ改善し、それぞれの子供が持つ力を発揮するための教育です。 0~3歳の子供は、特別支援を受けるために個別家族サービスプランが必要になり、3歳以上の子供には個人指導計画が必要です。
個別指導計画(通称、IEP)は、発達障害などを持った生徒が学校で必要な支援、サービスを受けるための個別指導計画です。 個別指導計画には、生徒の現時点での学業成績や将来の目標、生徒が必要とする学校や専門家によるサービスの内容や頻度が書かれています。 個別指導計画の内容は定期的に見直され、生徒の学力が向上しているか、学習目標を満たしているかなどを定期的に測定し、必要に応じて変更します。
個別指導計画のプロセスは、リファーラル前の教育支援から始まります。 どのような教育支援を受けるかどうかは、その生徒の抱えている問題によって異なります。 この段階で、注意するべき点は下記の通りです。
(1) 生徒が抱えている問題や苦手分野を記録・説明する
(2) 通常学級内の教育支援や指導内容・評価基準の変更にどのような反応を示しているか
(3) 様々な教育支援方法の効果を判断・測定する
(4) 生徒の向上度を記録する
プリリファーラルの段階では、正式な障害の識別検査を行う前のスクリーニングを行います。 通常、特別支援教育への正式なリファーラルの前に、家族や教師陣が協力し合って、普通教室でどのようなサポートができるかを話し合います。 この段階では、生徒が普通教室で受けられる様々な教育支援方法を試し、その結果、生徒がどれくらい学力を向上させることができたかを測定します。 プリリファーラルは、特別支援教育を受けなくても良い生徒を判別し、不必要なアセスメントを避けるためにあります。
リファーラル後には、個別指導計画の基礎データとなる知能検査や学力診断などを行います。 これらの検査や診断を総称して、アセスメントと呼びます。 このアセスメントを通して、生徒に障害があるかどうか、特別支援教育を必要としているかどうか、どのようなサービスを必要としているかを確認します。 アセスメントは、複数の教師陣、学校スタッフ、専門家などによって行われ、それぞれが専門知識を用いて、生徒の得意分野と苦手分野の診断を行います。 生徒が16歳以上の場合には、大学進学や就職に向けての職業能力に関するアセスメントも行います。
アセスメントでは、生徒の能力や発達段階が正確に認識できるよう、知能検査や学力診断の結果だけでなく、学校や家での行動パターンや、人付き合い、遊んでいる時のしぐさや言動などを細かく観察します。 このアセスメントを行った結果、生徒が障害を持っていないと判断される場合もあります。 その場合、その時点で個別指導計画のプロセスは中断され、その生徒は特別支援教育を受けずに普通教室内で教師のサポートを受けます。 生徒が障害を持っていると判断された場合は、今後の学力を測定するためのベースライン(基準値)として、アセスメント結果が使われます。 その後、個別指導計画が実施された後に、この最初のベースラインをもとに、生徒の学力がどれほど向上しているのかを測定します。
個別指導計画が作成されたら、生徒はその個別指導計画に沿って、適切なサービスを受けます。 個別指導計画には、生徒にとって必要とされている授業のサポートや、教室でどれほど特別対応が必要とされているか、授業やテストの際に必要とするサポート、専門家から受けるべきサービスなどが書かれています。 普通学級で授業を受けていない生徒には、以降どのような方法でアセスメントを行い、学力測定をするのかも書かれていることがあります。
個別指導計画に書かれた生徒の学力目標などが、多少変更になる場合もありますが、その場合新しい個別指導計画を作成し直す必要はありません。 多少の変更であれば、個別指導計画の会議をせずに、決められた教育支援とサービスが続行されます。 ただし、生徒の学力目標、必要とするサービス内容、所属する学級や学校に変化がある場合は、生徒の保護者に書面での連絡が必要となります。 例えば、生徒が普通学級から特別支援学級に移らなくてはならないなど、大幅な変更がある場合は、あらたに個別指導計画の会議を開いて話し合います。